勃起力向上トレーニング

「陰茎が立たない」「勃起しても射精まで維持できない」といったED(勃起不全)の悩みは、男性にとって深刻です。加齢やストレス、睡眠不足、喫煙、肥満、血管の問題など原因は多岐にわたりますが、その中に骨盤底筋(いわゆるPC筋を含む筋群)の機能低下が関係するケースがあります。

この記事では、勃起の維持に関与する骨盤底筋(PC筋)の役割と、今日からできるトレーニング方法を、研究データを踏まえて整理します。


勃起力の向上にはPC筋(骨盤底筋)の強化

骨盤底筋とは、骨盤の底で臓器を支え、尿道や肛門の開閉(排尿・排便のコントロール)に関わる筋肉群です。男性では、勃起や射精にも関係する筋として球海綿体筋(bulbospongiosus)坐骨海綿体筋(ischiocavernosus)などが知られています。

勃起は、陰茎海綿体に血液が流れ込むことで起こりますが、骨盤底筋は血液が集まりやすい状態を支える働きがあると考えられています。骨盤底筋の機能が弱いと、血流を保つ力が落ちて「硬さが出にくい」「途中で萎える」といった状態につながることがあります。


骨盤底筋を直に鍛える「骨盤底筋エクササイズ」

骨盤底筋を鍛える基本は、いわゆるケーゲル(Kegel)に代表される骨盤底筋エクササイズです。道具不要で、慣れれば立ったままでも座ったままでも行えます。

① 骨盤底筋の確認(まず「どこを動かすか」を正確に)

骨盤底筋は「肛門をキュッと締める」「ガスを我慢する」「肛門を体の内側へ引き上げる」感覚に近いです。会陰部(肛門と陰茎の間)に軽く触れて、肛門を締めたときに内部が少し持ち上がる感覚があれば、狙いの筋に入っている可能性が高いです。

注意:放尿中に尿を止める動きは“確認目的”として説明されることがありますが、日常的に繰り返すのは推奨されません(排尿機能に悪影響を与える可能性があるため)。トレーニングは排尿してから行うのが一般的です。[3]

② 基本フォーム(5〜10秒キープ+ゆっくり脱力)

まずは「正確さ」を最優先にします。腹筋・お尻・太ももに余計な力が入ると狙いがズレます。

骨盤底筋エクササイズ(基本)
1) ゆっくり呼吸しながら、肛門をじわじわ締める(息を止めない)
2) 締めた状態を5〜10秒キープ
3) その後は5秒ほどかけてゆっくり脱力(ここが重要)
4) 1)〜3)を10回繰り返す

③ 回数・頻度(目安)

上記を1セットとして、まずは1日2〜3セットを目安に始めます。慣れてきたら、セット数や回数を増やすよりも、「締める→脱力」両方が丁寧にできているかを優先してください。

やりすぎ注意:骨盤底筋は「締めれば締めるほど良い」ではありません。過緊張(締めすぎ)になると、痛み・違和感・排尿トラブルにつながることがあります。だるさや痛みが出る場合は回数を減らし、脱力(リラックス)を長めに取ってください。


周りの筋肉から鍛える下半身トレーニング

骨盤底筋は単独で働くというより、体幹・股関節まわりの筋肉と連動します。特に内転筋(内もも)・殿筋(お尻)・体幹を整えると、骨盤底筋の働きが出やすくなる人がいます。

ワイドスクワット(内転筋メイン)

足を肩幅より広く開き、つま先をやや外へ。背すじを伸ばし、膝がつま先の方向に開くように下げます。
目安:10回×2〜3セット(フォームが崩れるなら回数を減らす)

サイドスクワット(股関節・内転筋+安定性)

左右に重心を移しながら片脚ずつ曲げ、反対脚は伸ばす。腰が丸まらない範囲で行います。
目安:左右8回×2セット

バードドッグ(体幹+骨盤の安定)

四つん這いで、右手と左脚を伸ばし、背中が反らないようにキープ。反対も同様。
目安:左右10回×2セット(1回ごとに2〜3秒キープ)

ヒップリフト(殿筋+骨盤の安定)

仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げます。腰を反らしすぎず、お尻で持ち上げる意識。
目安:12回×2〜3セット


科学的検証

骨盤底筋トレーニングがEDに有効かどうかについては、臨床研究があります。代表例として、英国で行われたランダム化比較試験(RCT)では、骨盤底筋エクササイズ+バイオフィードバック+生活習慣指導を行った群が、生活習慣指導のみの群に比べて、3か月時点で勃起機能指標(IIEFの勃起機能ドメイン)が改善しました。[1]

また、骨盤底筋トレーニングについてのシステマティックレビューでも、複数研究で改善が報告されている一方、プロトコルのばらつきや研究の質の差があり、解釈には注意が必要だとまとめられています。[2]

図の読み方(今回のグラフについて)

縦軸:IIEF(国際勃起機能スコア)の勃起機能ドメイン(範囲:1〜30)[4]
横軸:時間(ベースライン→3か月→6か月…)

Intervention:最初から骨盤底筋トレーニング(+指導)を実施
Control:まず生活習慣指導のみで経過を見て、途中から骨盤底筋トレーニングを開始

この試験では、3か月以上の継続でスコア改善が見られ、途中から介入に切り替えた群でも改善が示されました。[1]


続けるコツ(ながらでOK。ただし「正しく」)

骨盤底筋エクササイズは、慣れれば電車の中、デスクワーク中、テレビを見ながらなど“ながら”で継続できます。
一方で、効果を出すにはフォームの正確さが最重要です。最初の1〜2週間は「回数」より「狙いの筋に入っているか」「脱力できているか」を優先してください。


注意:受診を考えるべきサイン

EDは、糖尿病・高血圧・脂質異常・睡眠障害・服薬の影響など、背景に疾患が隠れていることがあります。
急に悪化した、痛みがある、朝立ちが消えた状態が続く、生活習慣を整えても改善しない場合は、泌尿器科など医療機関での相談をおすすめします。


参考文献

[1] Dorey G, et al. Randomised controlled trial of pelvic floor muscle exercises and manometric biofeedback for erectile dysfunction. Br J Gen Pract. 2004.
[2] Wong C, et al. A Systematic Review of Pelvic Floor Muscle Training for Erectile Dysfunction. J Sex Med. 2020.
[3] Oxford University Hospitals NHS Foundation Trust. A Guide to the Pelvic Floor Muscles for Men.(患者向け資料)
[4] British Association of Urological Surgeons (BAUS). International Index of Erectile Function (IIEF) guidance.(質問票・スコア解説)

関連記事

PAGE TOP